Marine Fisheries Research and Development Center (JAMARC),Fisheries Research Agency
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平成24年度調査結果概要

  1  遠洋まぐろはえなわ(太平洋中・東部海域)
  2  海外まき網(熱帯太平洋海域及び熱帯インド洋海域)
  3  沖合いか釣(日本海海域)
  4  沿岸いか釣(長崎県壱岐周辺海域)
  5  遠洋かつお釣(太平洋中・西部海域)
  6  北太平洋さんま漁業(北太平洋中・西部海域)
  7  沖合底びき網(日本海西部海域)
  8  ひきなわ:タチウオ(豊後水道周辺海域)
  9  遠洋底びき網(南インド洋西部公海域)
 10  大中型まき網(陸上調査)
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1 遠洋まぐろはえなわ(太平洋中・東部海域)
調査船:開発丸(489トン)

調査期間:5月〜翌年3月

調査海域:太平洋中・東部海域

本調査の目的
遠洋まぐろはえなわ漁業において,効率的な漁業生産技術及び省エネルギー技術等の開発により収益性の改善を図るとともに,国際漁場において操業機会を確保しつつ,環境に配慮した操業技術の開発等を行い,当該漁業の持続的発展に資する。


本年度調査の主な成果等
(1)メバチの分布水深・水温帯に集中的に釣針を設置する超深縄手法の作業性の改善と水域別の生産性の検討
ラインホーラーの油圧・回転数を上げつつ調整を行ったところ,揚縄時間が短縮される傾向がみられ,超深縄(浮縄長150m)125鉢(釣針2,000本)を,開発丸の標準的な通常深縄(浮縄長40m)での使用鉢数(160鉢,釣針2,560本)と同様の所要時間(約13時間)で揚縄可能であることが示された。 次に,超深縄の生産性を検討するために,一連のはえなわ漁具の中央部に“超深縄+水中ライト鉢”と“通常深縄鉢”を40鉢配置し,それぞれの釣獲率を調べ,その結果と直近の販売実績から1操業あたりで期待される生産額を試算した。

操業調査は,9月下旬の洋心部水域で8回,12月のタヒチ東方で20回行った。 タヒチ東方では,超深縄のメバチの釣獲率は,通常深縄の約2倍であった。 洋心部ではその差は小さく,一方,その他の魚種の釣獲率は,通常深縄の方が高かった。

1操業での使用鉢数を超深縄で125鉢,通常深縄で160鉢として,1操業あたりの生産金額を試算したところ,タヒチ東方では,超深縄が123万円,通常深縄が84万円となった。一方,洋心部では,通常深縄が70万円,超深縄が50万円となった。 メバチの漁獲が主体となる漁場では,超深縄での生産金額が高くなったが,メバチの釣獲率が低く,メバチ以外の釣獲率が高い漁場では,超深縄は,通常深縄に比べて生産金額が低くなる可能性が示された。


(2)音響手法による小型歯鯨類の食害回避手法の効果検証
小型歯鯨類による食害被害緩和のために,2種類の“イルカ避け”発信器〔DDD(Dolphin Deterrent Device):高圧音でランダムな周波数の音波を常時発信して慣れを防ぐ特徴を有する発信器)とDID(Dolphin Interactive Device):小型歯鯨類のクリック音を感知した際に,音波を突然発信させることで驚愕させ,音への緩和効果を高める特徴を有する発信器〕を用いた食害回避効果の検証試験を2月上旬〜3月中旬のジョンストン沖で34回実施した。
漁獲対象種の釣獲率への効果に関しては,試験操業期間を通じた比較では明確な結果は得られなかった。ただし,イルカ避けの効果が顕著であったと思われる操業はみられた。また,計12個体の食害を確認したが,いずれもイルカ避け非設置鉢で発生していた。


成果の普及状況
得られた成果は,業界に成果を逐次知らせると共に,個別の船主や漁業者等からの問い合わせに対応している。超深縄仕立ての使用に適した時期・海域に関しては,その目処が立ちつつある。また,操業結果や水温情報は,日本かつお・まぐろ漁業協同組合のホームページで公開され,漁業者に利用されている。


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2 海外まき網(熱帯太平洋海域及び熱帯インド洋海域)
調 査 船:日本丸(744トン)

調査期間:5月〜12月

調査海域:熱帯インド洋海域

本調査の目的
海外まき網漁業において,熱帯インド洋海域のカツオ・マグロ類資源を対象に調査を行い効率的な操業パターンについて探求するとともに、若齢マグロ類の漁獲を最小化する手法について調査する。
ブイライン操業法等の新技術の効果および燃料消費の見える化について調査する。


本年度調査の主な成果等
海外まき網漁業の主漁場である熱帯太平洋海域は, VDS(隻日数)方式の導入やFADs操業禁止期間の設定等,操業環境は厳しさを増している。こうした中,当該漁業の安定的な漁場確保のため,インド洋海域における効率的な操業パターンの確立及び小型まぐろ類の混獲削減技術の開発等が求められている。そこで本調査では,過去の調査でデータ蓄積が無い南西モンスーン期における漁場調査及び流れ物付き操業での光刺激を利用した小型まぐろ類混獲削減技術開発等に取り組んだ。 南西モンスーン期の調査は, 5月から9月の操業一回あたり漁獲量を北緯海域と南緯海域について比較した(図)。

図 南西モンスーン期(5〜9月)における海域別漁獲量の比較(トン/操業)

その結果,平均漁獲量で北緯海域63.3トン,南緯海域28.8トンと北緯が大きく上回り、この季節に北緯海域の生産性が比較的高いことが示された。 光刺激を利用した小型まぐろ類混獲削減技術開発については,カツオ・メバチの点滅光に対する忌避反応の差を活用してメバチのみ網外に誘導する試みを実操業において14回実施した。その結果,点滅光を使用してもメバチの漁獲比率は減少しなかった。原因について検討中である。 また,まき網漁具シミュレーションモデルの高度化に取り組み、ブイライン操業における網の形状や沈降等の精度良い計算が可能となった。


成果の普及状況
熱帯太平洋海域の操業環境が厳しくなる中,本調査の取り組みは,今後の事業展開を検討するための資料として重要度を増している。本調査にて開発に取り組んだブイライン操業法は,もうかる漁業プロジェクトの取り組み項目のひとつに採用され,実操業に活用されている。


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3 沖合いか釣(日本海海域)
調 査 船:第二吉丸(164トン)

調査期間:11月〜2月

調査海域:日本海海域

本調査の目的
沖合いか釣漁業を対象とし,船上灯の出力削減を実現し得る新しい漁灯利用技術を確立することにより,本漁業の収益性改善に資する。


本年度調査の主な成果等
(1) 本調査では,船上灯出力を削減するための方策としてLED水中灯の利用可能性を検討している。 前中期計画期間においては,北太平洋のアカイカ操業の際,夜間に水中灯を併用することで漁獲量を維持しつつ船上灯出力削減が可能であることを確認した。他方,日本周辺海域におけるスルメイカを対象とした操業では,同様の効果事例も見られたが再現性のある結果となっていない。    スルメイカについては,光に蝟集する反面,一定以上の強い光に対しては忌避行動を取ることや船周囲に集群したスルメイカは船体前後の低照度域を伝って船下に侵入することが確認されている。本年度調査では,これらの結果に基づき,船上灯とLED水中灯の利用方法を検討した。
(2) 船上灯出力削減に際して船下への経路となる低照度域を確保することを企図して,船首付近の船上灯を消灯して189kWとし,通常操業に相当する249kWとの間でスルメイカの行動や漁獲量を比較した。1〜2月の日本海西部漁場では,189kW操業では船首付近だけでなく船全周で照度が減少し,これに伴って船周囲に集まる魚群量が少なくなる傾向はあるが,船首付近の低照度域からスルメイカが侵入する様子が観察され(図1),結果として漁獲量の差異は認められなかった。   このことから,船周囲に集群したイカのうち船下に収容可能なのは一部であり,船下への侵入路を確保しておくことで漁獲維持に必要な量のイカを船下に誘導可能であると考えられる。なお,船上灯出力の削減により,船周囲に集群するスルメイカの量が船下におけるイカの収容量を下回る場合には漁獲量の減少も想定される。
(3) 船体中央部を消灯して船下への経路となる低照度域を確保した状態で,減灯に伴う照射域の減少を補完するためLED水中灯を船尾から離した状態で垂下して船尾の低照度域を拡張した場合と,水中灯を使用しない場合を比較した。スルメイカの集群状況からは水中灯の影響は正負いずれも認められず(図2),この方法で照射域を補完し集魚を補助する効果は得られなかった。
(4) 以上の結果より,船上灯の出力削減によって照射域が減少し,船周囲へのスルメイカの集魚量が減少する場合であっても,船下への経路となる低照度域を確保することで,漁獲維持に必要な量のスルメイカを船下に誘導できる可能性が示された。   他方で,このような光環境を実現するためには水中灯は必ずしも必要ではなく,むしろ,前年度までの調査では,水中灯を船下の低照度域に垂下した場合には多くの場合でイカの逸散を引き起こすことが確認されている。   以上のことから,少なくとも沖合漁場においては,水中灯による効果的な船上灯出力削減は困難であり,より低出力での操業を実現するため,部分的な導入が始まっているものの本格的な普及に至っていないLED船上灯について,実用性を高めるための技術開発に取り組む必要がある。

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4 沿岸いか釣(長崎県壱岐周辺海域)
調査船:平和丸(19トン)

調査期間:12月〜3月

調査海域:長崎県壱岐周辺海域

本調査の目的
沿岸いか釣漁業を対象とし,船上灯の出力削減を実現し得る新しい漁灯利用技術を確立することにより,本漁業の収益性改善に資する。


本年度調査の主な成果等
(1)本調査では,船上灯出力を削減するための方策としてLED水中灯の利用可能性を検討している。   沿岸いか釣漁船に関するこれまでの調査では,作業空間の乏しい小型船でも水中灯の設置・操作が可能であること,水中灯光がスルメイカの行動に影響を与えること,潮流変化時にスルメイカのCPUEが変化することを確認した。一方,沿岸いか釣漁船のなかには主機駆動発電を行っているものも多く,船上灯出力に応じた主機回転数の切り替えが段階的にしか行えないことにより,船上灯出力を削減しても主機回転数が変わらず,燃油消費量の節減につながらない場合があることが判明した。   以上を踏まえ,本年度調査では,船上灯への依存度を低減するため,主として潮流変化に合わせて水中灯を操作することによるスルメイカの効率的な誘導の可否を調査するとともに,このことによる燃油消費量節減の可能性を検討した。
(2)調査の結果,水中灯を潮流変化と無関係に操作しても漁獲量は増加しないが,潮位が最高または最低となる時刻に合わせて水中灯を引き上げた場合には漁獲量が増加し(図1),
この効果は水中灯を使用せず,潮流変化の影響のみを受けた場合に比べて大きい可能性が示された。この方法で操業することにより,船上灯出力を20%削減した場合でも他船と同等の漁獲量が得られた(図2)。

(3)本調査を実施した壱岐周辺海域においては,長崎県小型いか釣漁業許可の制限条件により距岸12海里以内では船上灯出力が60kW以下に制限されている。これまでの調査では,船上灯出力36〜60kWの範囲では燃油消費量に大きな違いが見られなかったことから,60kW制限海域で操業する場合には,船上灯出力を40%削減に相当する36kWに引き下げても燃油消費量の節減効果はほとんど得られないことになる。このことから,前項に示したように潮流変化に合わせた水中灯使用による船上灯出力の削減度合が20%程度に留まる場合には,距岸60kW制限海域での操業においては燃油消費量の節減効果はほとんど期待できないと考えられる。   壱岐周辺海域で操業する当業船の海域別の操業頻度を調べた結果,距岸12海里以内での操業頻度は,12月は約54%,1月は約73%,2月は約78%,3月は約82%であった。このように,月を追う毎に,水中灯使用による燃油消費量の節減が期待できない60kW制限海域での操業頻度が増加することが明らかとなった。

(4)以上のことから,少なくとも当該海域のような操業条件下では,水中灯を併用することによって充分な燃油消費量節減に結びつくような船上灯出力の削減を実現することは困難であることが明らかとなった。   今後は,より低出力での操業を実現するため,部分的な導入が始まっているものの本格的な普及に至っていないLED船上灯について,実用性を高めるための技術開発に取り組む必要がある。


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5 遠洋かつお釣(太平洋中・西部海域)
調査船:第31日光丸(499トン)

調査期間:9月〜3月

調査海域:太平洋中・西部海域

本調査の目的
遠洋かつお釣漁業における効率的な資源利用のため,漁場探索能力の向上及び省エネ・省コストを企図したシステムの改良等を行うと共に,カタクチイワシ利用技術の高度化を図り,当該漁業の経営の安定と持続的な発展に資する。特に南太平洋海域における採算性の高い操業形態の追求を主たる目的として調査を実施する。


本年度調査の主な成果等
遠洋かつお釣漁業は,まき網漁業との競合及びカツオ資源の来遊不安定に加え,燃油価格の高止まり傾向も重なり,厳しい経営状況にある。平成24年度の稼働隻数は22隻で,燃油価格の高止まりと稼働隻数の減少により,漁場探索及び操業水域の狭隘化を引き起こし,漁海況に関する情報量の低下を招いている。このため,新しい探索技術や燃料消費量削減技術等の開発が望まれている。そこで本調査では,衛星情報等を活用した漁場探索技術の開発及びカタクチイワシの適正飼育により燃料消費量を削減する技術の開発等に取り組んだ。
衛星情報等の活用に関しては,タスマン・ニュージーランド海区のガスコイニ海山(36°S, 156°E)付近に,水色3〜4(クロロフィル濃度0.094mg/l〜0.190mg/l)に相当する水域と中層(20m深)水温図上の水温勾配帯が重なった12月中旬以降にカツオ漁場が形成されていた。特に漁獲量が増加した12月下旬以降は中層水温図上に認められる暖水舌が,ガスコイニ海山周辺で反時計回りの渦を形成しており,衛星情報による漁場探索の可能性が示された(右図)。  カタクチイワシの適正飼育に関しては,これまでの取り組みで得られた知見から,船上での適正な飼育条件(水温20℃,有害アンモニア濃度0.48ppm以下,DO4mg/L以上)を明らかにし,日本近海海区でその省エネルギー効果を検証した。その結果,冷却用の冷凍機の負荷軽減に加え,漁場水温及び飼育水温が一致した際に冷凍機を約220時間停止することができ, 約8.9klの燃料削減効果が認められた。

本年度調査の主な成果等
タスマン・ニュージーランド海区の試験操業結果は当業船の漁場選定に活用されている。また,カタクチイワシの適正飼育に関しては,当業船7隻が実操業へ導入を開始している。今後,当該手法をさらに普及させるためには,実証データの蓄積を行うとともに,マニュアル等の分かりやすい方法で明示していく必要がある。


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6 北太平洋さんま漁業(北太平洋中・西部海域)
調査船(操業船):第一榮久丸 (198トン) 第三十七傳丸 (167トン)
第十五三笠丸 (169トン)

調査船(運搬船):第十八漁栄丸 (199トン) 第十一権栄丸 (199トン)

調査期間:5月20日〜7月31日

調査海域:北太平洋中・西部海域(公海域)

本調査の目的
(1)平成19年度から調査を行い,これまでに,公海域でもサンマ操業が可能であるが,漁場が遠いこと,広範囲に魚群が分散すること,近海域に比して灯付きが悪いことのそれぞれに対応する必要があることが明らかとなった。漁場の遠さへの対応としては,運搬船を利用することで操業船の漁場滞在期間を長くできるとともにより遠方漁場も利用でき,漁獲量増大の効果があることを明らかにした。
また,フィッシュポンプを用いた運搬船への漁獲物転載技術を確立した。
以上を踏まえ,本年度調査では,主として以下の各課題に取り組んだ。
? 広範囲に魚群が分散することに対応するための衛星情報利用技術の開発
? 灯付きの悪さに対応するための水中灯利用技術の開発
? 運搬船利用技術開発の一環としての運搬船での製品生産体制の検討
(2)衛星情報利用技術に関しては,これまでに利用してきた表面水温情報に加え,海面高度情報の利用可能性を検討し,海面高度の急な高まりの裾野付近で好漁場が形成される傾向がみられ,探索指標としての有効性が示唆された(図1)。
(3) 水中灯利用技術に関しては,船上灯を併用せず,LED水中灯(青緑色2kW×1本)のみを使用した場合には灯下に魚群を誘導して保持する効果がみられた(図2)が,船上灯の点灯中にはこれを補って灯付きを改善する効果は得られなかった。今後,水中灯を単独で使用する集魚ブイ方式の可能性について検討することとする。
(4)輸出向けを想定した凍結製品の運搬船での試験生産を行い,製品品質は転載前漁獲物の保蔵期間や保蔵状態に左右されることから,品質確保と効率的生産の両立のためには,用途・市場に応じた品質要件を明確にする必要があることを確認した。また,操業船の航海期間を通じて製品保蔵能力を維持するため,操業船において次第に不足する氷の補給手法を検討し,さんま漁船の多くが搭載している氷移送装置による船間転載が可能であることを確認した。
(5)公海操業の実現のためには,探索と集魚の技術開発をさらに進めることで操業の効率化を図るとともに,海外などの市場開発と市場に応じた効率的生産体制の確立が課題である。


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7 沖合底びき網((日本海西部海域)
調査船:大福丸(76トン)

調査期間:4月〜10月(禁漁期間である6月〜8月を除く)

調査海域:日本海西部(主に隠岐諸島周辺および隠岐諸島西方海域)

本調査の目的
沖合底びき網漁業を対象に,資源管理や経費削減を企図した漁具の改良や開発を行うことにより,本漁業の持続的発展に資する。


本年度調査の主な成果等
(1) 日本海西部の沖合底びき網漁業において,漁業生産金額に占めるズワイガニの割合は5割弱であり,本種の資源状態が漁業経営に与える影響は非常に大きい。そのため,本種の積極的な保護を目的として,ズワイガニの禁漁期間中における混獲を回避するための漁具の開発と導入が求められている。このことに対応するため,前年度は主に隠岐諸島東方海域でズワイガニ混獲回避漁具の開発のための試験操業を実施し,当該漁具の有効性を確認したが,漁獲対象魚種や底質等の漁場環境が異なる隠岐諸島西方海域への対応が課題として残された。そこで本年度は,混獲回避漁具の汎用性を高め,広範囲にわたる導入の促進を目指して,他漁場でも利用可能な漁具の開発・実証化に取り組んだ。
(2) 調査に用いた混獲回避漁具は,大福丸が通常使用している漁具を基本とし,ズワイガニの混獲を回避するための開口部を腹網に,漁獲物を分離するための選別網を網口付近に,それぞれ設けた構造とした(図1)。
開口部にはカバーネットを装着し,袋網とカバーネットに入網したズワイガニとソウハチの重量を操業毎に測定した。そして,各操業のカバーネットに入網した重量割合を平均することにより,ズワイガニの排出割合とソウハチの逃避割合を算出した。
(3) 主に選別網周辺の仕様を調整しながら試験操業を行い,かけまわし漁法におけるズワイガニとカレイ類の入網経路の違いを考慮して,選別網の脇網への取り付け位置と前端中央部の高さを決定することが重要であることを明らかにした。
この漁具では,ズワイガニの排出が80%および60%の場合,ソウハチの逃避はそれぞれ25%および9%程度であると見込まれる。
(4) 2か年の調査結果から,既存漁具の網口付近に選別網を設置して魚種の分離を行う本方式の混獲回避漁具について,推奨する仕様を整理した(図2)。選別網周辺の各仕様を変更することによって選別性能を調整することが可能であるため,ズワイガニ資源の増大に向けた排出目標を定めた上で漁具仕様を決定し,効率的に運用することが期待される。
















成果の普及状況
調査海域を漁場として利用する鳥取県の当業船27隻中,17隻が当該漁具を既に導入済または導入見込である(平成25年4月現在)。


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8 ひきなわ:タチウオ(豊後水道周辺海域)
調査船:豊漁丸(4.3トン)新光丸(4.2トン)  6月〜10月
正福丸(4.3トン)喜久吉丸(4.2トン)11月〜12月


用船期間:平成24年6月〜12月(8月は除く)
調査期間:平成24年6月〜平成25年3月

調査海域:豊後水道周辺海域

本調査の目的
沿岸域における漁船漁業について,資源状態を把握しつつ経費の削減と漁獲物の単価向上による収入増を実現し,資源を持続的に利用しながら収益性の改善と経営の安定化を図る。本年度は,昨年度に引き続き大分県臼杵地区のタチウオひきなわ漁業を対象に当該漁業の経営改善と持続的発展に貢献する調査を行う


本年度調査の主な成果等
(1)操業の効率化
1人でも操業が可能とするための技術開発として,昨年度で得られた結果に基づき,船上台秤及び投縄装置を外部に委託して開発を行い,船上台秤は特許として,投縄装置は実用新案として申請した。生餌と同等の釣獲能力を有する擬似餌の開発についてメーカーと漁業者との共同研究を昨年度に引き続き行った結果,従来より大きい6インチ型新擬似餌は,耐久性が優れているだけでなく,タチウオの小型個体の釣獲を抑えることも確認され,資源保護にも効果があることが期待される。これらの機器類は各メーカーにより既に販売されている。また,これらの機器類の開発により,労力が軽減されるとともに,安全を確保した操業が可能となった。今後は,経済効果の検証や資源への貢献についての検証を行うこととしている。

(2)タチウオの単価向上
タチウオの販売単価向上を企図し,昨年度に設置した地元行政,研究,市場,加工流通,生産の各部門の担当者からなる専門部会の運営を大分県に委託し,中央水産研究所等の専門家によるアドバイスを受けて販路拡大に向けた検討を行ってきた。
その一環として,地元の高等学校とも連携した臼杵産タチウオの地元への普及や,臼杵市,漁協,加工業者と地元での市場開拓に取り組んだ結果,弁当の商材として商品化され,既に販売されるに至った。また,タチウオの集積地である福岡地区での消費者動向や卸関係のニーズ把握にも取り組んでいる。

(3)資源の有効利用に関する取り組み
資源の持続的利用については,大分県に委託し,瀬戸内海区水産研究所とも連携を行うことにより,タチウオ資源の持続的利用に向けた調査を行った。また,今年度より計量魚探による調査にも取り組んでおり,適切な資源管理方策に向けた検討も行っている。
本調査で開発した漁労機器類(左から船上台秤、投縄装置、新擬似餌)


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9 遠洋底びき網(南インド洋西部公海域)
調査船:玉龍丸(284トン)

調査期間:11月〜1月

調査海域:南インド洋西部公海域

本調査の目的
遠洋底びき網漁業を対象に,漁業資源の持続的利用と脆弱な海洋生態系の保全の双方に配慮した操業手法を開発することにより,本漁業の持続的発展に資する。


本年度調査の主な成果等
(1)南インド洋西部公海域においては,水産総合研究センターが平成21-22年度に実施した漁場開発調査結果に基づき,日本漁船によって,中層トロール漁法を用いた企業的操業が行われている。この中層トロール漁法は,VME(脆弱な海洋生態系)への影響が極めて低い点で優れているものの,我が国以外の関係漁業者等からは,キンメダイの小型魚の漁獲比率が高いとの懸念も表明されている。こうした背景のもと,本調査では,小型魚に偏らないバランスの取れた操業形態の確立に向けた基礎的情報とするため,有用魚種に対する漁具及び漁法の選択性を明らかにすることを主目的とした調査を行った。

(2)調査船の保有する通常コッドエンド(公称目合外径120mmの二重網。実測内径97mm±4mm)と,比較用コッドエンド(目合外径200mmの二重網。実測内径175mm±0mm)とを用いて,着底トロール漁法による比較操業を行った。主要魚種であるキンメダイ(Beryx splendens),クサカリツボダイ類の一種(Pseudopentaceros richardsoni)のいずれも,漁獲量は200mm目合の方が少なかったが,目合間で魚体サイズの差は見られなかった(図1)。

(3)中層トロールと着底トロールの間での漁獲物のサイズ組成の差異を検討するため,平成21-22年度に当センターが行った調査における中層トロール漁具(公称目合外径110mmの一重網)を用いた操業との間で,キンメダイの尾叉長組成を比較した。その結果,両調査における本種の尾叉長組成には差異は認められなかった(図1,図2)。両調査におけるコッドエンド仕様の違いや,年や季節による違いが作用した可能性もあるが,中層トロールによって小型魚が選択的に漁獲される傾向は確認されなかった。

(4)混獲魚種およそ30種のサンプルを採取した。平成25年度に,これらの種を査定して混獲魚種相を把握し,底生魚類資源の開発可能性について検討する。

(5)海山群別に主対象魚種であるキンメダイの魚体サンプルを採取した。平成25年度に,このサンプルを用いて年齢と成長等の資源生物学的情報を分析し,南インド洋漁業協定において本種の資源管理方策が検討されるにあたって,我が国が科学的対応を行うための基礎的資料として整備する。


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10 大中型まき網 (陸上調査)

本調査の目的
大中型まき網漁業において、漁獲対象資源への負荷低減及び収益性改善のための操業システムの省コスト化を図るとともに、地域漁業管理機関の定める規制への技術的対応を検討する。


本年度調査の主な成果等
大中型まき網漁業の操業形態は,多投資多獲型の船団操業が主流であり,燃油価格の高騰不安定などにより,安定経営が難しい状況にある。北部太平洋海区では,水研センターによる2隻体制からなる操業システムの実証化調査を受けて,漁業者自身による取り組みが行われているが,更なる効率化に繋がる先進的な漁業技術の開発・実用化が望まれている。
漁獲対象の資源は回復途上にあり,また来遊状況は不安定であることから,今後,漁獲増による収益向上は見込めない。

以上から,多獲性魚類の持続的利用の実現と漁業経営の安定を両立するため,資源への負荷低減を実現しうる省エネ省コスト型の操業システムの構築に係る要素技術について検討を進めた。 操業技術及び漁具の改良を図ることによる操業の効率化及び経費の節減のため,水中におけるまき網漁具の挙動を正確に把握する。まき網操業技術の可視化への取り組みを開始した。この技術の核となるまき網漁具の水中動態シミュレーション技術(NaLA)は近畿大学と日東製網が所有していることから,3者での共同研究を行った。
海外まき網の新漁法であるブイライン操業法を対象に,まき網の各ワイヤーの繰り出し・巻き込み速度・線長や,各操業段階のタイミング等の正確な測定値を取得し,NaLAプログラムにより高精度で操業状況を再現できる可能性を示す結果を得た。

図 ブイライン投網法のシミュレーションの一例
今後は更に測定データ箇所及び種類を増やすとともに,取得データを活用したシミュレーション結果の再現性を評価し、必要に応じてパラメータ設定の改善を行う。 また,東シナ海・黄海の大中型まき網漁船船団(網船,灯船,運搬船の4〜5隻)において年間4000KL前後消費されている燃油量の削減手法を検討した。年間消費量が全体の約6割を占める運搬船に着目し,平成24年12月に7回行われた運搬航海のうち,入港してすぐに水揚げを行えなかった5回の航海において2ノット程度の減速運転をしたと仮定した場合の省エネ効果を試算した。減速航海をした場合,30%程度の省エネとなるので,上記1ヶ月では運搬船1隻で金額にして40万円弱(燃油単価:90円/KL)の省エネ効果になると試算された。当該まき網船団は2隻の運搬船を利用し,年間50回以上の運搬航海を行っていることから,当該手法は経費削減に一定の効果のあることが示唆された。


成果の普及状況
日本遠洋旋網漁業協同組合で検討されている地域プロジェクトの課題のひとつとして,水揚げまで長時間の待機時間が見込まれる場合に,運搬船での水揚げ航海において減速運転を行うことが計画されている。

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