Marine Fisheries Research and Development Center (JAMARC),Fisheries Research Agency
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平成23年度調査結果概要

  1  遠洋まぐろはえなわ(太平洋中・東部海域)
  2  海外まき網(熱帯太平洋海域及び熱帯インド洋海域)
  3  沖合いか釣(日本海海域)
  4  沿岸いか釣(長崎県壱岐周辺海域)
  5  遠洋かつお釣(太平洋中・西部海域)
  6  北太平洋さんま漁業(北太平洋中・西部海域)
  7  近海はえなわ(北太平洋西部海域)
  8  沖合底びき網(日本海西部海域)
  9  大中型まき網(北部太平洋海域)
 10  ひきなわ:タチウオ(豊後水道周辺海域)
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1 遠洋まぐろはえなわ(太平洋中・東部海域)
開発丸(489トン)

調査期間:5月〜翌年3月

調査海域:太平洋中・東部海域

調査の目的
   遠洋まぐろはえなわ漁業において,効率的な漁業生産技術及び省エネルギー技術等の開発によって収益性の改善を図るとともに,国際漁場において操業機会を確保しつつ,環境に配慮した操業技術の開発等を行い,当該漁業の持続的発展に資する


平成23年度調査の主な成果等
    時期・海域別の通常深縄と超深縄の釣獲率
(1) 効率的な漁業生産技術のためのメバチの効率的な漁獲を目的として,従来よりも深い水深帯に釣針を設置する超深縄操業に取り組んだ。
また,省エネルギー技術の開発を目指し,魚倉保冷温度を従来よりも高くした 45℃保冷製品の市場性評価に取り組んだ。
(2)“通常深縄(浮縄長40m)” と“超深縄(浮縄長150m)+水中ライト”の比較操業(1操業あたり各40鉢ずつで比較)を,6月中旬〜下旬のタヒチ東方,11月上旬〜11月下旬のタヒチ南東,2月中旬〜3月中旬のジョンストン沖で合計55回行った。1鉢あたりの枝縄数は16本であり,超深縄では内4本に水中ライトを取り付けた。超深縄鉢の設置深度帯は,おおむね200〜300m,設置水温帯は,ほとんどの釣針が10〜15℃であった。メバチの平均釣獲率は,タヒチ東方では,通常深縄7.9に対し超深縄15.1,タヒチ南東では,通常深縄2.3に対し超深縄4.5,ジョンストン沖では,通常深縄5.5に対し超深縄8.7であった。いずれの時期・水域でも,メバチの釣獲率は,超深縄の方が高く,過去の試験と同様の傾向だった。一方,超深縄操業では幹縄に負荷が懸かるため,通常深縄と同じ揚縄時間とした際に設置できる釣針数は,通常深縄の70%程度であった。

   メバチ40kg上の保冷温度別の販売結果

(3)凍結メバチの魚倉保冷温度が市場評価に及ぼす影響を明らかにするため,同時期・同水域で漁獲したメバチ(40kg以上の赤身商材)を従来と同様の方法で急速凍結した後,超低温(‐50℃以下)魚倉と‐45℃程度魚倉に分けて,一定温度で保冷し,水揚げ後,同時期・同市場で,仲買人が製品1尾毎に評価をして競りを行う“解凍売り”において2つの保冷温度製品の販売結果を比較する調査を3年間にわたり実施した。その結果,‐45℃保冷製品と超低温保冷製品の販売単価の間に大きな差はみられなかった。



(4)漁業構造改革総合対策事業において,上記の取り組みを主体とした焼津プロジェクトが採択されており,平成24年4月から開始された。また,本調査における操業結果や水温情報は,日本かつお・まぐろ漁業協同組合のホームページで公開され,漁業者に利用されている。

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2 海外まき網(熱帯太平洋海域及び熱帯インド洋海域)
調 査 船:日本丸(744トン)

調査期間:5月〜10月,12月〜翌年3月

調査海域:熱帯太平洋海域・熱帯インド洋海域

調査の目的
海外まき網漁業におけるカツオ・マグロ類資源の合理的利用を図るため,熱帯インド洋海域において効率的な操業パターンについて探求するとともに、FADs操業における若齢マグロ類の漁獲を最小化する手法について調査する。ブイライン操業法等の新技術の効果および燃料消費の見える化について調査する。

平成23年度調査の主な成果等
(1)水産庁調査船照洋丸と共同でFADs操業でのメバチ小型魚混獲削減にかかる調査を実施し,点滅光などの刺激による魚の行動の変化についてコード化ピンガー標識により観察を行った。超小型ピンガーの使用により小型メバチ・カツオの標識後の生残率が向上し、魚群行動について豊富なデータを得ることが出来、また光刺激が魚の行動に影響を与えていることが明らかになった

今後データを精査することでFADs周辺での魚群行動や光刺激を利用した混獲防止方策についての知見が得られると期待される。

(2)シミュレーションプログラムNaLAによりブイライン操業のシミュレーションを行い,操業時の網なりが現実的な値として再現された。これらのモデルの精度を高め、様々な条件でのシミュレーション試行を重ねることで漁具の最適な使用法や、目的に応じた漁具設計の検討への応用が期待できる。

(3)インド洋産カツオの成分分析を行い、DHAなど機能性脂質の抽出原料として有望であるとの知見を得た。

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3 沖合いか釣(日本海海域)
調 査 船:第二吉丸(164トン)

調査期間:平成23年10月〜平成24年1月

調査海域:日本海海域

調査の目的
 沖合いか釣漁業を対象とし,船上灯の出力削減を実現し得る新しい漁灯利用技術を確立することにより,本漁業の収益性改善に資する。


平成23年度調査の主な成果等
(1)いか釣漁業における燃油消費量削減の取り組みのひとつとして,開発調査センターでは,LED水中灯を併用することによる船上灯出力の削減の可能性について調査を行っている。前中期計画期間においては,北太平洋のアカイカ操業の際,夜間に水中灯を併用することで,漁獲量を維持しつつ船上灯出力削減が可能であることを確認した。他方,日本周辺海域におけるスルメイカを対象とした操業では,船上灯出力を削減しつつ漁獲量を維持する実例も見られたものの再現性のある結果となっていない。 一般にスルメイカについては,光に蝟集する反面,一定以上の強い光に対しては忌避行動を取ることが報告されている。本調査では,蝟集と忌避の効果を適切に組み合わせて釣獲可能範囲内に効率的にイカを誘導する技術を開発するため, 船上灯及び水中灯の使用条件によるスルメイカ漁獲状況や行動の違いを調査した。


(2)船上灯の出力を通常操業(250 kW)より削減し,水中灯の併用条件を変化させた結果,水中灯を表層付近に垂下して出力を絞って点灯した場合には漁獲量が多く,水中灯を深く垂下した場合や,比較的高い出力で点灯した場合には漁獲量が少なかった。



(3)青色及び緑色LED水中灯を舷側に垂下して観察した結果,イカ群は水中灯垂下舷よりも反対舷のやや離れた位置に集群しており,釣獲尾数も反対舷で多い傾向が見られた。


(4)以上のように,本年度調査においては,水中灯の垂下水深などの点灯条件によって漁獲量が変化すること,イカ群が水中灯の反対舷に集群することが確認された。このことから,水中灯を用いてイカ群を釣獲可能範囲に誘導するためには,水中灯の適切な垂下位置を見いだす必要があると考えられた。


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4 沿岸いか釣(長崎県壱岐周辺海域)
調 査 船 :平和丸(19トン)

調査期間:平成23年12月〜平成24年3月

調査海域:長崎県壱岐周辺海域

調査の目的
   沿岸いか釣漁業を対象とし,船上灯の出力削減を実現し得る新しい漁灯利用技術を確立することにより,
本漁業の収益性改善に資する。


平成23年度調査の主な成果等
(1) いか釣漁業における燃油消費量削減の取り組みのひとつとして,開発調査センターでは,LED水中灯を併用することによる船上灯出力の削減の可能性について調査を行っている。
 沿岸いか釣漁船に関する調査では,作業スペースに乏しい小型船でも水中灯の設置・操作が可能であること,スルメイカが水中灯光に反応する反面,イカの盛漁期には魚類も多く,水中灯に蝟集した魚類によりイカが逸散する可能性が示唆された。また,潮汐等の影響によりCPUEが変化することを観察した。以上を踏まえ,本調査では,魚類の影響を避けることと,潮汐の影響を考慮することの双方に留意しつつ,効果的な水中灯利用技術の開発に取り組んだ。

(2) 調査船の周辺で水中灯に集群する20種の魚類を確認した。このなかには,イカ類を捕食する可能性のあるクロマグロ(ヨコワ)やブリなどの大型魚類も含まれていたが,これらの胃内容物からイカは出現せず,魚探等による観察でも,魚類によりイカの逸散事例は見られなかった。このように,水中灯に蝟集した魚類が操業に悪影響を及ぼすという当初懸念された現象はほとんど発生せず,水中灯使用操業に際しての大きな障害とはならないことが確認された。
 潮流と漁獲量の経時変化より,潮流の方向や速度が変化する前後に漁獲量が増加する傾向が認められた(図1)。
 

このような漁灯以外の要因による漁獲量の変化を,水中灯併用による省エネルギーとどのように結びつけ得るかについては,今後の検討課題である。


(3) 本年度調査では,水中灯を併用しつつ船上灯数を他船より2割削減して,他船と遜色ない漁獲を得た(図2)。

壱岐周辺では,操業区域毎に船上灯数の上限が定められている。
このため,船上灯数を2割削減した場合の燃油消費量の削減割合も区域によって異なり,50灯(150kW)制限区域では船上灯に係る燃油消費量の28%(毎時15 L)であったのに対し,20灯(60kW)制限区域では同8%(毎時2 L)にとどまった。


今後は,船上灯数上限が低い区域での燃油消費量削減の要否と方策の検討が課題である。また,上記の潮流変化など,漁灯以外の要因による漁獲量変化への対応も含め,水中灯の最適な使用条件を検討する必要がある。




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5 遠洋かつお釣(太平洋中・西部海域)
調 査 船:第三十一日光丸(499トン)

調査期間:9月〜翌年3月

調査海域:太平洋中・西部海域

調査の目的
  遠洋かつお釣漁業における効率的な資源利用のため,漁場探索能力の向上及び省エネ・省コストを企図したシステムの改良等を行うと共に,カタクチイワシ利用技術の高度化を図り,当該漁業の経営の安定と持続的な発展に資する。


平成23年度調査の主な成果等
(1) 衛星情報による中層水温図及びクロロフィル濃度を活用した漁場探索の有効性を実証するために,遠洋かつお釣り漁業において漁場指標となっている水色2〜3に相当するクロロフィル濃度0.045mg/l〜0.142mg/lの水域と中層水温図上の水温勾配帯の重なる水域を中心に漁場探索を行った。3月上半期には,2〜8°N,135〜144°E付近で好漁獲(CPUE9.5トン/日)を得た。このとき他船が操業していた10〜20°N,155〜165°E付近は,水色2未満で中層水温図上にも水温勾配帯が認められず,漁獲は低調(CPUE5.8トン/日)であった。


(2) 遠洋かつお釣船では,活餌用カタクチイワシを飼育するために,15℃の冷却海水を必要とし,多大な燃油を消費している。このため,これまでの知見に基づき,燃油節減を目的とした飼育水温及び換水量等の見直しを図り,船上での飼育条件を水温20℃,水質の指標であるNH3濃度0.48ppm以下,溶存酸素量4mg/L以上として,遠洋かつお釣船で活餌用カタクチイワシを長期飼育した。この結果,南方操業における1航海あたり燃油節減量は7.8kl〜8.8kl(全体の2〜3%)であった。カタクチイワシの1日あたり斃死率は0.20%〜0.43%で,活餌飼育に影響を及ぼすことなく,燃油節減を達成できることが示された。


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6 北太平洋さんま漁業(北太平洋中・西部公海域)

調査船(網船)   :

第十一権栄丸 (199トン),
第三十七傳丸 (167トン)
第十五三笠丸 (169トン)

調査船(運搬船):

第十八漁栄丸(199トン)、
第五十六北雄丸 (168トン)

調査期間:6月〜7月

調査海域:北太平洋中・西部海域

調査の目的
   北太平洋のサンマ資源を対象とし,公海漁場を活用した北太平洋さんま漁業の漁期拡大によって当該漁業の経営を改善し,国内需要への安定的供給に資する。


平成23年度調査の主な成果等
(1) 平成19年度から調査を行い,これまでに,公海域でもサンマ操業が可能なことを確認したが,漁場が遠いこと,広範囲に魚群が分散すること,近海域に比して灯付きが悪いことのそれぞれに対応するため,効率的操業のための運搬船の利用技術,効率的探索のための衛星情報等の利用技術,効率的集魚のための漁灯利用技術の開発が必要であることも明らかとなった。  本年度調査では,運搬船利用技術開発の一環として,フィッシュポンプを用いた効率的転載技術の開発を主なねらいとした。

また,効率的探索のための海洋環境とサンマ魚群分布の関係に関する情報収集と,効率的集魚のためのLED水中灯利用技術開発にもそれぞれ取り組んだ。さらに,東日本大震災の復興支援の一環として,調査を通じて得られた漁期前情報の迅速な提供を行ったほか,調査漁獲物を対象とした放射性物質検査により安全性確認を行った。

(2) 効率的転載技術の開発に関しては,フィッシュポンプ を用いて合計24回の転載により,756トンの漁獲物転載を行い,この方法により問題なく作業可能であることを確認した。また,この方法を用いることで,

? 昨年度まで実施した敷網を用いる方法に比べ,転載速度が速く作業効率が向上すること,
? 裏こぎ作業が不要であるために網船と運搬船の2隻のみで転載が可能であることから運航の自由度が向上すること,
? 大型のタモを用いた魚汲み作業が不要であるために安全性と作業性が向上すること,
? 敷網を介さず直接運搬船に転載するため漁獲物品質が向上すること,の4点の効果が得られることが明らかとなった。フィッシュポンプ転載方式が確立されたことにより,技術的には,フィッシュポンプを搭載することで,さんま船以外を運搬船として利用可能となった。

(3) 今後は,転載した漁獲物を用いた輸出向け凍結製品生産などにより,公海操業の収益性向上を図るため,製品生産体制の構築とこのために必要な関連技術の開発が必要である。また,効率的探索と集魚のための技術開発にも引き続き取り組みが必要である。

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7 近海はえなわ(北太平洋西部海域)


調 査 船:調査船:海青丸(149トン)

調査期間:4月〜8月

調査海域:北太平洋西部海域

調査の目的
   気仙沼地区近海まぐろはえ縄漁業について,収益性が他の時期に比して悪化する4月〜8月を対象に,操業海域及び対象魚種の拡大,初期冷却効果による漁獲物の鮮度保持技術の開発による単価向上により,年間の収益性の改善を図る。また,燃油消費実態の把握により省燃費操業に向けた運用方法の提案を行う。


平成23年度調査の主な成果等
(1) 操業調査
   気仙沼地区近海まぐろはえ縄漁船は,4月〜8月はヨシキリザメを主対象としていたが,近年の単価の下落により収益性が悪化している。この時期の収益性の改善のために,操業海域を低緯度まで拡大し対象魚種をヨシキリザメよりも高価格が期待されるビンナガやメバチとするとともに,従来船よりも2名少ない14名体制での操業を行った。当該海域で既に操業を行っている19トン型まぐろはえ縄漁船を参考に,これまでの浅縄操業から深縄操業に切り替えるとともに,釣針数をこれまでの3,000本程度から2,000本程度とした。その結果,周囲で操業を行う19トン型船と同程度のビンナガ,メバチの漁獲が確保され,従来型の気仙沼地区近海まぐろはえ縄漁船よりも2名少ない14名体制でも十分に深縄操業が可能であることを実証した。


(2) シャーベット状海水氷を使用した初期冷却効果の確認
   中央水産研究所と連携して初期冷却による漁獲物の品質への影響を分析した結果,ビンナガについては,初期冷却の有無に関わらず,経過日数が長くなるほどk値は高くなる傾向が顕著であり,初期冷却の効果は期待されず,長期間の漁場滞在を避けるべきことが示された。メバチについても,通常の氷蔵処理とk値やメト化率の経日変化の差がなく初期冷却の効果は確認されなかった。


(3) 収益性の改善の検討
ビンナガは,夏場には他漁法での漁獲増加により単価が下落する傾向にあり,5月〜6月のビンナガ操業では昨年同時期のヨシキリザメ操業時よりも1日当たりの生産金額は減少した。7月は,単価が高いメバチ操業に変更することにより,1日当たりの水揚げ金額は上昇した。このことから,気仙沼近海まぐろはえ縄漁船の夏期の収益性を改善する方法としては,ヨシキリザメとメバチとを計画的に水揚げすることが効果的であると考えられる。詳細については,中央水産研究所と連携して分析を行っているところである。


(4) 近海まぐろはえ縄船の燃油消費実態の把握 水産工学研究所と連携して,解析を行った結果,本年度のように銚子を水揚げ基地とする場合,銚子から東方の漁場に向かう航行では黒潮続流を活用すること,漁場から銚子に向けての復航時には黒潮続流を避けて航行することが,燃油節約の上から効果があることが明らかとなった。また,操業中に幹縄を切断することによる探索活動に相当量の燃料が消費されることから,幹縄の切断回数を減少させるための漁具へのメンテナンスが省燃油のためにも重要であることが示された。

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8 沖合底びき網(日本海西部海域)
調査船:明信丸(95トン)

調査期間:4月〜10月(6月〜8月は禁漁期間)

調査海域:日本海西部(隠岐諸島周辺)

調査の目的
 沖合底びき網漁業を対象に,資源管理や経費削減を企図した漁具の改良や開発を行うことにより,本漁業の持続的発展に資する。

平成23年度調査の主な成果等
(1) 鳥取県の沖合底びき網漁業において,漁業生産金額に占めるズワイガニの割合は約50%であり,本種の資源状態が漁業経営に与える影響は非常に大きい。鳥取県沖合底曳網漁業協会は,ズワイガニ混獲回避漁具の導入により,本種資源の積極的な保護を目指している。そこで本調査では,鳥取県の沖合底びき網漁業を対象に,鳥取県水産試験場が開発した簡単な構造の漁具を基に,混獲回避漁具の実証化に取り組んだ。


(2) 調査に用いた混獲回避漁具は,地元で通常使用している漁具をベースに鳥取県が開発した混獲回避漁具(以下,鳥取県型漁具)と当センターが新規に開発した箱型二階層構造の混獲回避漁具(以下,二階層構造型漁具)の2種類とした(右図)。各漁具の混獲回避用の開口部にはカバーネットを装着し,袋網とカバーネットに入網したズワイガニとアカガレイの重量を操業毎に測定した。そして,選別性能を評価するために,各操業のカバーネットに入網した重量割合を平均化することにより,ズワイガニの排出割合とアカガレイの逃避割合を算出した。

(3) 鳥取県型漁具は,調査中に選別網の形状と取り付け位置を変える改良を行ったことでズワイガニの排出割合は増加し,アカガレイの逃避割合は減少した(下表)。二階層構造型漁具では,調整ロープで選別網口高さを変化させることによりズワイガニの排出割合とアカガレイの逃避割合の調整が可能であった(下表)。また,泥やヒトデ類などの不要物は,開口部からほとんど排出された。各漁具は,導入費や選別性能の安定性に長短を併せ持つが,選別性能が安定していて調整可能な二階層構造型漁具により,資源管理の効果をより高めることが期待される。

(4) 成果の普及状況
本漁具は,今後,漁場による対象魚種の違いへの対応が課題である。しかしながら,本年度の調査海域とした隠岐諸島東方海域で操業する当業船10隻のうち,3隻が既に本漁具を導入しており,他船も順次導入を検討している。



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9 大中型まき網(北部太平洋海域)
調査船 : 恵比須丸(19.0トン)
第八十八光洋丸一号艇(9.1トン)
林丸(2.9トン) 

調査期間:7月〜11月

調査海域:北部太平洋海域

調査の目的
北部太平洋海域における大中型まき網漁業において,船団隻数の削減あるいは操業技術の改良等による経費の節減及び漁獲物の高付加価値化を追求する。

平成23年度調査の主な成果等
(1) 東日本大震災により逼迫した三陸のかつお釣漁業向け活餌供給を考慮し,20トン未満船による2そうまき網操業から1そうまき網操業への転換に係る技術開発の一環として,仙台湾及び周辺水域においてカタクチイワシを主対象に1そうまき網操業による活餌生産のための技術開発を行うとともに,調査で得られた活餌をかつお釣船に供給した。

(2) 大中型まき網漁業による活餌生産には,網船を2隻が用いられる2そうまき網方式と網船1隻が用いられる1そうまき網方式があり,探索船などを含め4〜5隻,乗組員11〜35名程度で行われている。
本調査では,3隻(網船・投網補助艇・探索船)11人で構成される1そうまき網操業方式で操業調査を行った。活餌生産のみを行うため,漁具規模は従来の80%程度とした。
投網はパラシュートアンカー方式で行い,パラシュートアンカー回収後,環巻き,揚網の順で作業した。揚網時の人員配置は探索船(裏漕ぎ作業)に1名,投網補助船(揚網作業等)に1名,網船に9名とした。揚網終了後,活餌運搬船を魚捕部に配置し,浮子を沈めて,網中の漁獲物を活餌運搬船(活餌組合手配)に移送した。
調査期間中に55回操業し,カタクチイワシ等を計87.0トン漁獲した。操業調査において,一定の所要時間で操業できること,生産した活餌は支障無くかつお釣漁船に利用されたこと等を確認し,本操業システムが活餌生産システムとして機能することを実証した。
今漁期の三陸におけるかつお釣漁業向け活餌の総供給量は47,753杯(活餌組合資料)で,本調査では三陸での総活餌供給量の約10%に相当する4,977杯を供給し,気仙沼を中心とするかつお水揚げ復興の一助となった。

(3) 現在の大中型まき網漁業において,20トン未満船3隻11人体制からなる1そうまき網操業システムによる操業は行われていないが,本調査により活餌生産システムとして利用できる可能性が示された。

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10 ひきなわ:タチウオ(豊後水道周辺海域)
調査船  :正福丸(4.3トン)
喜久吉丸(4.2トン)

調査期間:調査期間:9月〜12月

調査海域:豊後水道周辺海域


調査の目的
沿岸域における漁船漁業について,資源状態を把握しつつ経費の削減と漁獲物の単価向上による収入増を実現し,資源を持続的に利用しながら収益性の改善と経営の安定化を図る。本年度は,大分県臼杵地区のタチウオひきなわ漁業を対象に当該漁業の経営改善と持続的発展に貢献する調査を行う。

平成23年度調査の主な成果等

開発中の投縄装置


開発中の擬似餌
(1) 操業の効率化
1) 2隻のタチウオひきなわ漁船を使用して,投縄装置の開発と生餌と同等の釣獲が得られる擬似餌の開発を行った。

2) 投縄装置では4回の改良を行い,針落ちや針の絡みによる操業の中断に繋がるようなトラブルがほぼ解消できる装置を開発した。今後は,地区ごとの操業形態に対応した汎用性に向けた改良が課題となっている。

3) 擬似餌では,従来製品より釣獲および耐久性に優れる擬似餌を開発した。また,疑似餌サイズと釣獲サイズの関係が示唆された。今後は,色の変化や臭いの付加による釣獲効率の向上,大型の擬似餌を導入することによる小型魚の保護とより高価格な中大型個体主体の釣獲を図ることが課題となっている。

(2) 経費節減効果の確認
タチウオの盛漁期である9月から12月までの間に,上記の省力化装置や大型の擬似餌を使用し,操業体制を従来の2人から1人とした場合の収益性の改善効果を試算した。この結果,餌代は33%の節減が,また,漁獲の主体が相対的に高価格の中大型個体となることによる漁獲金額の27%の向上が見込まれ,収益性の改善が可能なことが示唆された。一方で,操業体制を2人から1人にする場合,水揚げ量は20%減少することが大分県水産研究部による仕切り伝票に基づく調査から推定されている。 今後,経費の内訳を整理し,省力化装置や全擬似餌の導入による経済効果について検証を進めることとしている。

(3) 販売単価向上対策(一部,大分県に委託)
臼杵産タチウオは平成7年より全量を福岡市場に共同出荷しているが,資源や市場の変化に対応した販路の多様化のための地元での需要拡大を目指し,地元の海洋科学高校の高校生および漁協女性部との連携によるタチウオの新製品開発に取り組んでいる。 一方で,中央水産研究所と連携してタチウオの流通実態を把握するとともに,流通の改善に関する検討を行っている。

(4) 資源の持続的利用方法の開発(大分県農林水産研究指導センター水産研究部への委託)
タチウオひきなわ漁業基地である大分県漁業協同組合姫島,くにさき,臼杵3支店の月別漁獲量,銘柄別取扱量に基づき分析を行った結果,本年の漁獲量は,ひきなわ漁業が開始された1980年以降最低であった。現在,漁獲物の精密測定や耳石解析による年齢査定に取り組むとともに,タチウオへの漁獲圧の軽減,収入増を企図してタチウオ以外の漁獲対象種の開発に取り組んでいる。



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