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いか釣り編第4話

報告者:原田 誠一郎
1997年1月から3月に、いか釣調査船第3新興丸に乗船した調査員からセンター女性職員一同に宛てた手紙の一部です。現場からの声をお聴きください。

第 4話(いか釣り編 4)
食事が終わりひとだんらくつくと、アメリカ入国の書類が配られました。

これはM上君がちゃんと準備してくれたので書類にサインをするだけで終わりです。

ボクには関係ないので大した注意もはらわず聞き流していました。

 ところがびっくりするようなアナウンスが流れてきました。

荷物はケネディ空港でいったん引き取り入国審査と手荷物検査を受けた後で 再度乗り継ぎの航空会社に預けてくださいというのです。

 "M上の野郎そんな話はしてなかったなぁ。
荷物はブエノスアイレスで受け取ればいいですからなんて言ってたのに。

あんにゃろう嘘をつきやがったたなぁ。ちくしょうメ。
面倒くさいことになったらあいつのせいだぞ!"

 ここでは完全にM上君をののしる愚痴になりました。

「JALからのクリスマスプレゼントです」
小さな真珠のついたミキモト製のしおりをもらってJALを後にしても、 頭から荷物のことが離れません。

 荷物を受け取り入国審査を受けるときも、 これが終わったらどこにどう持っていけばいいんだということが頭から離れません。

ここでまたまた、大きなミスを犯してしまいました。

マスクをしたままパスポートを係官に出してしまったのです。

 日本の係官はギロリとにらんだだけでしたが、アメリカの係官は、にらんだうえに、
「どうしてマスクをしているんだ?」ズバリと聞いてきました。

 ボクは久しぶりの英語と、しかめっ面をした係官を前にしてパニックです。

"あちゃー、喉が痛いは何だっけ?・・・テンゴ・ドロール・デ・ガルガンタはスペイン語だし。
ウ〜ン〜ん。確かにおいらは人相は悪いけどマスクをしているだけで何で質問をされなきゃいけないんだ。 マスクを見りゃ風邪気味だということくらい分からねぇのかい、このやろう"

 愚痴ってはみても、何とか理由をつけなければ、今度は荷物も身体もニューヨーク止まりです。

 「I have a cold!」
もう一度、アイ・ハブ・ア・コールドと繰り返したら、 「どんな用でアメリカへ来たのか」 とアメリカに来たのが迷惑だといわんばかりの質問です。

話題がマスクから飛びました。せっかく苦労して風邪だと作文したのに、
次はアメリカでの用向きを作文しなければいけません。

おれはこんなぶしつけな国に用はないんだ。
「トランジットだ!」
とこたえると、
「チケットを見せろ」 という。

束になったチケットをパラパラとめくって、やっとスタンプを押してくれました。

 やれやれ旅は疲れることばかりです。

こんな疲れる旅に喜び勇んで出かける人の心境が分かりません。

 関門はまだあります。手荷物検査が待っています。

 荷物を開けたとたん飛び出すであろうサキイカをめぐってどんなやりとりをしなければいけないのでしょうか。

タグの束は、日本の新しいヌードルだとでも説明しなければいけないのでしょうか。

数字や文字の入ったヌードルがあるのかと聞かれたらどうしよう。

出発前、村井次長からはブエノスアイレスではスペイン語は全く分からない振りをして押し通せとアドバイスらしからぬアドバイスを頂戴してきました。

でもここはアメリカです。そんな作戦が通用するでしょうか?

 恐る恐る近づくと、税関用の書類を箱に入れろというしぐさだけで、中身を見ません。

そのままフリーパスです。ちょっと拍子抜けしてしまいました。

心配性の小心者は自分で自分を苦しめていただけだったのです。

乗り継ぎ用の荷物預かり所は手荷物検査を終わった出口のすぐ左にありました。

JALの係員が対応してくれました。

ベルトコンベアを流れていく荷物はこれでしばらくの見納めとなりました。

さし当たっての問題はすべてクリアしました。

次は、アルゼンチン行きの受付カウンター(アエロリネアスの窓口)を探さないといけません。

荷物を預けてあたりを見回すと、両替窓口の横にアエロリネアスの看板がかかりコンピューターのモニターの頭だけ

が見えます。 人影は見えません。
ああ、ここか。出発まで時間があるからまだだれも来ていないんだ。

 おっちょこちょいの早合点が薄氷を踏む綱渡りを生むことになりました。

よくみれば受け付けカウンターにしては小さすぎますし、手荷物を受け入れる場所もありません。

コンベヤーも来ていません。

おかしいとすぐ感じるべきだったのです。

そこは時差ボケに、中国人の咳払いがこびりついた睡眠不足の頭を抱えたふうらい坊です。

なんの疑いもせず、2階の出発ロビーに上がってアイスコーヒーを飲んだり、 日本からしのばせてきた干し芋をかじったり、ボディビルディングの雑誌を買ったりして 時間をつぶしたのです。

continue.....