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いか釣り編第3話

報告者:原田 誠一郎
1997年1月から3月に、いか釣調査船第3新興丸に乗船した調査員からセンター女性職員一同に宛てた手紙の一部です。現場からの声をお聴きください。

第 3話(いか釣り編 3)
そうこうするうちに、機内には明かりが点り最後の食事の時間になりました。

アペリティフに、キャビアとファアグラ、チーズなどが出てきました。

海の商売をしている者はキャビアというものを一度は試してみなければいけません。

キャビアをお願いしたら、「フォアグラもありますょ」と、にこにこ顔のフライトアテンダントさんがすすめてくれました。

紳士はそんなにがつがつ食うものではない、ましてやここはファーストクラスではないか、 なんて、へんな道徳観念にとらわれて、さも食べ飽きているようなそぶりでフォアグラは断ってしまいました。  ほんとうのことをいうとフォアグラもまだ食べたことはないのです。

内心ちょっと失敗したかなと後悔しました。 後悔はたちまち大きな石の塊となって頭のてっぺんからのしかかってきました。

カートが通り過ぎると、はす向かいの席の、初老の、それこそネクタイをしめたほんものの紳士が、 キャビアにフォアグラにそのほかやたらめったらテーブルの上に並べてがつがつ食いついているではありませんか。

"ちくしょう!何だこのおやじは!あ〜ぁ、俺は紳士でもないただのふうらい坊なんだから、へんな見栄などはらずに、みんな頼めばよかった、

かといって、いまさらフォアグラくださいなんて呼び戻すのもかっこわるいし・・・" なァ〜んて悩んでいるうちに、カートはボクのフォアグラを乗せたまま遠ざかってしまいました。 これで、フォアグラは永遠にボクの口にはいることはないでしょう。

お次はフカヒレのスープ、天そば、ビーフカレーから選ぶようになっていました。 開発丸でフカヒレを取るだけはたくさん取っています。

取ったり見たりした分に見合うだけの恩恵を胃袋は受けていません。 それに海の商売をしている者はフカヒレのスープにするべきです。

迷うことなくフカヒレのスープを頼みました。 ワンタン風でうまい、うまい、うまい。満足、満足。

さて、お次は?とメニューを見たらなんと今のがメインディッシュだったのです。

フカヒレのスープは3つの中でいちばん低いカロリーメニューに書いてあります。

"何だ。スープでメインディッシュかよ。これじゃ腹がもたないぜ、ちくしょう。

ビーフカレーにしとけばよかった、失敗したぜ" さすがにこの愚痴ではM上君の名前を出すのははばかられました。

デザートはストロベリーババロア。メインディッシュのカロリー不足を補わなければいけないので、 二の句を告げず頼みました。

上品に小皿に切り分けてくれました。 もし、「もう少し、いかがですか」と聞かれたら、迷うことなく、「そのまま、丸のまま、円盤のまま、ください」 とお願いするつもりでした。

でも、そんなせりふをつぶやくような素振りはみじんも見せず、紳士はそんなにがつがつ食べるものではありません、

ましてやこれは甘ったるいケーキなんですからお体にさわりますょ、なんてやさしいようなやさしくないようなまなざしで行き過ぎてしまいました。

どうもボクは、ファーストクラスのアテンダントさんとは意思の疎通がうまくいきません。 ケーキはひとかけら食べただけでした。

continue.....