序 文

  人類にとり食料確保は極めて重要な課題であり,このために,有効で重要な営みの一つとし て,漁船漁業を的確な資源管理のもとで行い,自然の生産力を活用して持続的に食料を供給することがあげられます.
  国立研究開発法人 水産総合研究センターは国の重要な政策である水産物の安定確保と供給,水産業の健全な発展を実現するために水産に関する基礎から応用,実証までの研究開発を行う研究機関です.開発調査センターは,この一研究所として,海洋水産資源の開発,利用の合理化のための調査を行い漁船漁業による持続的食料供給に貢献する役割を担っています.
  開発調査センターは2009年から2012年にかけてインド洋南西部公海の海山水域におけるトロ ール調査を行いました.今回の図鑑は,この調査で得られた魚類サンプルにもとづいて作成したものです.
  トロール漁業を,対象資源と生態系を維持しつつ持続的に行っていくためには,非対象種も 含めた生態系への配慮が不可欠であり,対象海域の生物相を正確に把握することが極めて重要 です.また,陸上生物に比べ,知見が限られている海洋生物の研究が前に進むことは水産業に とって有意義なことであり,水産業に関係する者としてこのような研究に貢献することは一つ の責務であると考えます.
  今回の図鑑が,インド洋における海洋生態系の把握ととともに,漁船漁業の持続的発展に貢 献することを願ってやみません.
  この図鑑の発刊に当たり種の同定及び執筆の労をわずらわした執筆者各位,特に編集業務に あたられた国立科学博物館松浦啓一名誉研究員,西海区水産研究所星野浩一室長に厚くお礼を申しあげます.

国立研究開発法人水産総合研究センター

理 事  武 井  篤